1 :猪(ベース):2006/12/17(日) 21:30:46.49 ID:xp9Tg2rW0

第01話『紫煙』

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(  )「私、煙草吸う人嫌い」
('A`)「……あっ」

合コンでの出来事である。

('A`)「ちくしょう……」

煙草を吸う人間は低俗とみなされる時代――それにも関わらず、ドクオは愛煙家だった。
学生時代に覚えた習慣を変えることは出来ず、今日も文字通り煙たがられてしまったのだ。

('A`)y-・「へっ……あんな奴、どうでもいいさ」

夜道の中、負け犬の遠吠えをしながらアルコールによって熱った体で一人寂しく帰路に付いた。
口寂しくなり、ポケットから煙草を取り出し火を着ける。
銘柄はラッキーストライク。

('A`)y-・「ただいま」

独り暮らし故、返事が無いのはわかっているが染み付いた習慣はやはり直らないのだ。

11 :初夢(ろうそく熱い):2006/12/17(日) 21:40:24.48 ID:zVmIWee/O
『ようこそ日本へ』と毛筆で書かれた暖簾をくぐった時――

川 ゚ -゚)「おかえり」

――酔いは一気に覚めた。

(;'A`)y-・「ふぇ……えぇえぇえ!」
川 ゚ -゚)「ご飯は食べたのか?」

長いしなやかな赤髪、端正な顔立ちと宝満な体、
そして黒いレザーのチューブビキニと、同様のミニスカートという露出度の高い出立ち――
胸ポケットにはラッキーストライクのロゴ付きである。
そんな女性が荒廃した部屋に鎮座していたのだ。
余りの驚愕に、ドクオは情けなく尻餅をついてしまった。

川 ゚ -゚)「ご飯は食べたのか?」
(;'A`)「は、はいぃぃ!」
川 ゚ -゚)「そうか、ならご飯の支度は要らないな」

そんなドクオに構わず尋ね続けた女性。
ドクオは足腰の立たぬまま、部屋の灰皿で煙草を揉み消した。
そして働かない頭をフルに回転させたが、なぜこんな美女が自分の部屋にいるのかドクオは想像も付かなかった。
 
12 :初夢(ろうそく熱い):2006/12/17(日) 21:41:58.58 ID:zVmIWee/O

女性は火を揉み消すドクオの姿を見て微笑んでいた。

川*゚ -゚)「……いつもありがとうな。
……んっ」

――触れ合う唇――

('A`)「くぁwせdrftgyふじこlp」
川;゚ -゚)「だ、大丈夫か!?」

へたり込んでいるドクオの頭を抱え、女性は濃厚な口付けを交したのだ。
理解不能な女性、理解不能な状況、理解不能な行動。
それら全てに思考回路はオバーヒートさせられ、ドクオは気を失った。
意識が無くなって行く中で、ひたすら自分に言い聞かせる――
――これは夢だと。
煙草を吸っている自分と口付けしたがる女など居ないのだから。

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朝――小鳥のさえずりが優しく耳をつつき、まどろみが消し去って行く。

('A`)「ふぁぁ……あれ?」

ベッドから覚醒したドクオは異変に気付いた。
規則正しく鳴る包丁の音。味噌汁の匂い。
独り暮らしには全く無縁なことである。

14 :初夢(ろうそく熱い):2006/12/17(日) 21:43:37.08 ID:zVmIWee/O

川 ゚ -゚)「起きたか?今、朝飯を作っているから、もう少し寝ていてもいいぞ」
('A`)「……」

夢ではなかった。
だぶだぶの服を着ながら、実家から送られたきり使っていなかったエプロンを着けて料理にいそしむ美女がそこにいたのだ。
ドクオはまじまじとそれを見つめていた。

川 ゚ -゚)「ああ、服を勝手に借りたぞ。寒かったから」
('A`)「別にいいですけど……」

そうじゃない、俺がツッコみたいのはそこじゃないと
思いつつドクオは受け答えした。

川 ゚ -゚)「さぁ、めしあがれ。日本食は慣れてないから、味は保証しない」
乱雑としたテーブルから物を押し退けて配膳が為されていた。
米、味噌汁、野菜炒め。実家から送られた食材を駆使したのだろう。
味噌汁を一口含む。
――ちょっとしょっぱいけど、美味いな。
いや、そうじゃなくて――

('A`)「あの」

意を決した。

('A`)「あなた誰?」

21 :初夢(ろうそく熱い):2006/12/17(日) 21:46:29.75 ID:zVmIWee/O

女性は味噌汁に箸を付けながら、ドクオの表情を伺った。
箸に不慣れな様子だった。

川 ゚ -゚)「私はお前を愛している。お前も私を愛している。
それでいいではないか」
(;'A`)「はぁ?」

理解不能、理解不能、理解不能。
気分を落ち着けさせるために、昨日の服からラッキーストライクを取り出し火を着けてパープルヘイズを吐く。

('A`)y-・「……」
川 ゚ -゚)「ほら、私を愛しているだろう?」
('A`)y-・「……!」

ドクオの脳裏にある仮説が紡ぎ出された。
そういえば、彼女が初めに来ていた服には――

(;'A`)y-・「あ、あなたの名前は?」
川 ゚ -゚)「『ラキスタ』だ」

――ラッキーストライクのロゴがあったのだ。

(;'A`)y-・「えぇえぇえ!」
川 ゚ -゚)「私は『それ』だよ。ドクオ」

精霊?妖精?幽霊?
説明は付かないが、事実は事実であった。

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23 :初夢(ろうそく熱い):2006/12/17(日) 21:47:52.58 ID:zVmIWee/O

('A`)「行ってきます……」
川 ゚ -゚)「行ってらっしゃい。浮気は駄目だぞ」

他の銘柄は吸うなということだろうか。
ラキスタが唇を突き出したが、ドクオはそんな気分にはなれず無視をした。

満員電車に揺られながら、ドクオは物思いに耽った。
何故、どうしてを繰り返したが答えが見付かる筈はない。

(,,゚Д゚)「またお前かゴルァ!」
('A`)「サーセン」
(,,゚Д゚)y-・「ったく……お前のせいで煙草の本数が増えるだろうが!」

仕事もうわの空で、普段より上司に叱られる回数が増えてしまっていた。
誰かに相談しようと考えたりもしたが、冷笑されるのが目に見えていたためにドクオは内に秘めるしかなかったのである。

('A`)「ただいま」
川 ゚ -゚)「おかえり」

仕事を終えて帰宅すると、ラキスタは夕飯の支度をしていた。
その作業を中断し、ドクオを出迎えたのだが……。

川 - )「浮気しただろ?」

――凍った視線――

26 :初夢(ろうそく熱い):2006/12/17(日) 21:48:50.04 ID:zVmIWee/O

('A`)「今日は煙草を吸う気分じゃなかったですよ」
川 ゚ -゚)「嘘だ。セブンスターの臭いがこびりついてる」

ラキスタは殺気にも似た雰囲気をかもしだしていた。
細い眉を吊り上げ、白い肌は紅潮し、桃色の唇はとがっていた。

('A`)「ああ、上司の煙草の銘柄がセブンスターなんですよ」
川 - )「嘘だ」

思い当たる節を告げても、ラキスタの不機嫌は直らなかった。

('A`)「ったく」
('A`)y-・「ほらっ」

ラキスタの前でドクオは美味そうにラッキーストライクを吹かした。
その瞬間、ラキスタの表情は喜色に満ち、そしてドクオを上目使いで見つめた。

川*゚ -゚)「よかった……んんんっ」
(;'A`)y-・「ひ、ひはほひへなひへ(舌を入れないで)!」

一方的だが、愛を確かめ合うフレンチキス。
ドクオはあれこれ考えるのを止めた。

――実はおいしいのでは――?

そう思ったのだ。

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28 :VIP皇帝:2006/12/17(日) 21:50:01.41 ID:zVmIWee/O

食事を済ませ、することも無いのでドクオは床に着こうとした。

('A`)「ラキスタさんはベッドで寝て下さい。俺は布団で寝ますから」

そう言いながら、ドクオは押し入れからカビ臭い布団を取り出した。
最後に布団を使ったのは母親が上京した3年前だった。
それ以来一回も干してなかった。

川 ゚ -゚)「ドクオ」
('A`)「はい」
川 ゚ -゚)「病気になるからやめろ」
('A`)「でも……」
川 ゚ -゚)「一緒に寝よう」
(;'A`)「えぇえぇえ!」

期待してなかったと言えば嘘になるが、ドクオは『ねーよw』と期待を頭から抹消させていた。

川* - )「抱いても……いいぞ?」

――苦みの代名詞からの甘い誘惑――

(;'A`)「くぁwせdrfgyふじこlp」

どうする、どーすんのよ!俺!

――つづく
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